三人が紅魔館へ戻ると館は超時が出掛ける前よりも少し慌しい雰囲気となっていた。
魔理沙襲来の後にフランドールの件もあったので従者達は皆どことなくそわそわとしていた。
そんな中レミリアはロビーで咲夜を呼び、すぐに現れた彼女に外であった経緯を話した。すると咲夜は安堵の表情を浮かべ、
「そうでしたか・・・。皆様に大きな怪我が無くて良かったです。扉の修理も取り掛かってはいますが、修復が完成するまでもう数日かかると思われます。」
「あぁ、それならもういいわ。」
レミリアがさらり言うと、咲夜が目を丸くして驚いた。
「・・・は?と、仰られますと・・・?」
咲夜が言うと、レミリアは
「もうあの部屋にはフランを入れない。今回の一件でやっと決心したわ。あの子をあの部屋に入れとくとフランの教育的に悪い気がしてきたの。それに・・・。」
「それに?」
超時がきょとんとして復唱すると、レミリアは頬を紅く染めて俯いてしまった。超時が首をかしげていると、レミリアが再び顔を上げて、
「だ、大事な従者を妹のストレス発散で殺されたりでもしたら私が気分悪くなるからよ・・・!とにかくフランは今度から三階の子供部屋に移動させて住まわせるわ。」
「かしこまりました。では、フランドールお嬢様。お部屋の片付けに参りますよ?」
咲夜がフランドールにそう言うと、フランドールは慌ててそれを否定した。
「ち、ちょっと待ってて咲夜!すぐに片付けるものがあるから!そしたら来て!」
そう言ってフランドールは急いで地下に続く階段へと走っていった。それを見てレミリアは、
「さて、私は部屋に戻るわ。夕食は部屋で摂るから持ってきて頂戴。」
そう言ってレミリアは階段を登っていった。それを見送った咲夜は改めて超時を見て凛とした声で、
「とりあえず、お疲れ様。色々と大変だったでしょうけど、お願いしておいたシャンプーハットはちゃんと買ってこれたかしら?」
「勿論です。香霖堂の森近さんから頂いてきました。・・・これです。」
超時はバッグからシャンプーハットを取り出し、咲夜に渡すと彼女はそれを受け取り微笑を浮かべ、
「まぁ、時間はかかったけれどはじめてのおつかいとしては上出来ね。それじゃ、これは預かっておくわ。そろそろ私はフランドールお嬢様の所へ行かないといけないからもう行くわね。」
ポケットから取り出した懐中時計を見てそう言い残し、フランドールが閉じ込められていた地下室へ続く階段の方に歩いていこうとしたとき、ふと咲夜は足を止めて思い出したかのように超時に言った。
「そうそう、パチュリー様なら最上階の自室にいらっしゃるから、用があるならそっちに行きなさい。」
「分かりました。」
超時が答えると咲夜は廊下を歩いていった。一人残された超時は、
(とにかく、小瓶をパチュリー様に届けてしまおう。)
そう思ってバッグを持ち直し、最上階にあるパチュリーの部屋へ向かった。時刻は戌の刻を少し過ぎた頃であった。
パチュリーの部屋はレミリアの部屋の左隣にあり、扉のすぐ脇に筆記体で彼女の名前が書かれたプレートが掛けられている。
超時は一呼吸おいてその部屋の扉を軽くノックをした。数秒待った後、中からパチュリーの声が聴こえた。
「鍵は掛かっていないわ。入りなさい。」
「失礼します。」
超時は一言そう言って中に入った。地下の図書室よりも整理されているパチュリーの部屋も落ち着いた紅い色で統一されており、超時に与えられた部屋よりも少し広い。
天井まである高さの本棚が部屋を取り囲んでおり壁が見えない。
その中には魔導書のようなぶ厚い本が隙間無く片付けられていて、まるで小さな図書館のような状態になっている。
そんな部屋の右奥には浴室か寝室と思われる部屋のドアがあり、そのドアの手前にある小さな机でパチュリーは眼鏡をかけ、ランプの光を頼りに本を読んでいた。
超時がパチュリーの近くへ歩み寄ると彼女はメガネを外し、顔をあげ超時の方を向き、
「私が思っていたより早かったじゃない。てっきり、魔法の森で迷ってもっと遅くなると思っていたわ。・・・無事に取り返してこれたかしら?」
パチュリーがそう問いかけると、超時は顔を曇らせ申し訳なさそうに言った。
「小瓶の方は魔理沙さんに事情を説明したら快く返してくれたんですが、茸の件なんですけれど・・・」
そう言って超時は手元のバッグから空の籠をパチュリーに見せた。
「・・・それはどうゆうことかしら?」
空っぽの籠を見せられたパチュリーは眉を潜ませて超時に問いかけた。
「えぇとですね・・・。とりあえず、僕が森へ入ったところから説明しますね・・・。」
超時は魔法の森で起こった事、魔理沙とアリスの二人も自分が元の世界に戻るために協力してくれる事、フランドールに襲われた事、
そして魔法の森には茸がありすぎてどの茸を材料に使えばよいか分からない事、等をパチュリーに説明した。
数分かかって超時が説明を終えると、パチュリーは納得した面持ちで、
「成程、そうゆうことだったのね。私としたことが茸の種類までは考えて無かったわ。アリスはともかく魔理沙が協力してくれるのはありがたいわ。魔法の森のことはあの子達に任せるとして・・・貴方の体の事なんだけれど、あの森に入って具合はどうかしら?」
パチュリーが再び超時に問いかけると、超時は自分の体を観察しながら、
「えぇと、森の中に入った最初のときは少し息苦しかったのですが、次第に慣れて特に大きな障害はありませんでした。特に目立った怪我も無く・・・あぁ、そういえば森に入る前、といってもこの紅魔館を出発するときに空を飛べなくなってしまいました。」
「空を飛べなくなったですって?」
パチュリーが驚きの声をあげる
「はい。それで今日は仕方なく歩いて人間の里や香霖堂をまわりました。森に入ってからアリスさんと魔理沙さんたちと出会って、夜に森を出たときに・・・あー、正確に言えば魔理沙さんの箒に乗せてもらって森の外に出たときですね。そのときにフランドール様に襲われ、その箒から落ちたとき何故か再び飛べるようになったんです。今はもう昨日のように・・・」
ほら、と超時は彼女の目の前で数センチ浮いてみせる。
「魔理沙の箒に乗せてもらったのね・・・。」
「えぇと?今なんと・・・?」
超時が聞き取れず聞き返すとパチュリーは慌てて、
「い、いや、なんでもないわ。・・・そんな事より、私の魔術には間違いは無いと思うけれど・・・。」
そう言ってパチュリーは少し考え込み、その後ゆっくりと話し出した。
「・・・これは私の憶測でしかないのだけれど、貴方がここに初めてきたときに説明したように貴方の身体は・・・いいえ、貴方の精神構造体はものすごく歪んでいるのよね。だからその所為って可能性も有り得ると思うわ。魔法の森の胞子で異常が出たのならわかるけれど、今朝からってのが謎ね・・・。・・・もしかしたら今後そうゆうこともあるかもしれないから注意しといたほうがいいわね。飛んでる最中に飛べなくなって落ちるなんてシャレにならないわ。」
「分かりました。・・・あの、それでもう一つ疑問に思った事があるのですけれど・・・。」
「何かしら?」
「今ここにいる【僕】という存在が精神だけの存在であるのならば、元の世界にあるはずの僕の肉体自身は無事なのでしょうか?」
超時が恐るおそるパチュリーに問いかけると、彼女は肩をすくめて苦笑しつつ、
「流石にそれは私でも分からないわ。・・・もしかしたらそのまま道端に転がってたりしてね。」
「そ、そんなぁ・・・」
「ふふ、ただの冗談よ。・・・でもまぁ、有り得ない話ではないと思うから一応レミィにでも聞きに言ったらどうかしらね。」
そう言ってパチュリーは微笑み、超時の持っていた空の籠を受け取り、
「とりあえず、今日はご苦労様。魔法の森の胞子はたとえ半吸血鬼でもダメージが無いとは言えないわ。だから、この二、三日は少し休んだほうがいいと思うわ。」
「そ、そうですか・・・しかし、お嬢様に僕の体のことを伺ってから判断したいと思います。道端に転がってでもしたらなおさら早くしないといけませんからね。」
超時が皮肉をこめて言うとパチュリーはクスクスと笑い、
「それもそうね。とにかく、レミィの所へ行ってみるといいわ。」
「はい。そうする事にします。今日はありがとうございました。それでは失礼します。」
超時は一礼をしてパチュリーの部屋を出た。
(あの子もどうやらこの幻想郷におおかた慣れてきたみたいね。人間は慣れ初めが怖いってどこかの本に書いてあった気がするけれど・・・あの調子なら大丈夫そうね。なんだか彼とは長い付き合いになりそうだわ・・・。)
超時が部屋を出て行った後、ふとそんなふうにパチュリーは考え、再び読書を再開した。
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超時がパチュリーの部屋を後にして廊下に出ると、フランドールの部屋で片づけを手伝っていたはずの咲夜が食事をワゴンに乗せて持ってくるところに出会った。
「咲夜さん。」
超時が咲夜に呼びかけると咲夜は超時に気付き、
「あら貴方、パチュリー様とのお話は終わったの?」
ええまぁ、と返事を返した超時は逆に咲夜に問いかける。
「・・・ところで、咲夜さんはどうしてここに?フランドール様の手伝いに行ったはずじゃなかったんですか?」
「あぁ、それはもう終わったわ。今は妹様は三階の子供部屋でお休みしているわよ。それでその片付けが終わった後に厨房に行ってお嬢様のお食事をここまでこうしてワゴンに乗せて持ってきたの。」
それを聞いた超時は嬉しそうな表情を浮かべ、
「それは丁度良かった。」
そう言うと咲夜は不思議そうに、
「何が丁度良かったのかしら?」
と超時に問いかける。超時は手短に自分がパチュリーの部屋で話した事を咲夜に説明をした。
「・・・という訳で恐縮なんですが、お嬢様の夕食を僕に運ばせてもらえませんか?」
それを聞いて咲夜は少し考えた後、頷いて
「まぁ、私にはまだ他に仕事があるから手伝ってくれるのはありがたいけれど、くれぐれもお嬢様に失礼の無いようにしなさいね。これが今晩の食事のメニューで、貴方はこれを読み上げて、お嬢様のお食事が終わったところで食器を片付ければいいわ。それから・・・・」
咲夜はその後手短に礼儀的作法を超時に教え、夕食の乗ったワゴンを任せると、歩いていってしまった。
一人残された超時はワゴンを押しつつ咲夜から教わった事を思い出し、レミリアの部屋の前で立ち止まり、深呼吸をしてレミリアの部屋の扉をノックした。すると、
「・・・誰ぇ?」
レミリアの寝ぼけたような声が聴こえた。どうやら中でレミリアはウトウトとしていたらしい。
「東雲です。咲夜さんの代わりに夕食を持ってきました。」
「え、あ、貴方が・・・!?・・・ち、ちょっと待ってなさい。」
あからさまに中で焦った様子のレミリアが慌てた口調で言うと、中でゴソゴソと物音が聞こえた。
(中で何か片付けでもしているのかな・・・)
超時がそんな事を思っていると物音は止み、中から落ち着いたレミリアの声が聴こえた。
「鍵は開いているわ。入りなさい。」
それを聞いて超時は挨拶をしてレミリアの部屋に足を踏み入れた。
彼女の部屋もまた、一面に紅を基調としてあしらってあるが、パチュリーや超時のような他の部屋よりも数段階上を行く豪華なつくりとなっていた。
そんな豪華で広い部屋の中央に置かれているどっしりとした雰囲気の大きなテーブルに、レミリアは自分の体の大きさに合わない大きな椅子に座って超時を待っていた。
超時はレミリアの部屋に圧倒されつつも、咲夜に言われたとおりに夕食の手順を踏み、食事のメニューを読み上げる。レミリアはそれを微笑みながら黙って聞いていた。
超時がメニューを全て読み上げると、レミリアは微笑して、
「ご苦労、頂くわ。」
そう一言言って食器を手に取り食事を始めようとしたとき、ふと手を止めて超時に向かって、
「・・・で、私に何か質問でもあるのかしら?」
それを聞いて超時は驚いて目を丸くする。それを見たレミリアはクスリと笑ってスープを一口飲んだ後、
「いつもこの部屋には咲夜が持ってきてくれるのだけど、それを貴方が持ってきたとなれば私に何かしらの用事があったからなのでしょう?」
「えぇまぁ・・・そうなんですけど・・・。いいんですか?食事・・・。」
「かまわないわ。食べながら聞いてあげる。」
きっぱりと言ったレミリアに面食らいながらも、超時は彼女にパチュリーの部屋で問いかけたことをパチュリーの見解も踏まえつつ説明した。
超時が話している間に食事をたいらげたレミリアはナプキンで口をぬぐい、超時を見つめて、
「あぁごめんなさい、そのことについて貴方に説明をするのを忘れていたわ。」
そう言って手にしていたナプキンを置き、話し始めようとしたその時、
≪それは私に任せてもらえるかしら?≫
不意にレミリアの背後から彼女の声とは違う女性の声が聴こえた。その不思議な声に超時は驚き、レミリアの背後を確認したが勿論そこには誰もいない。
(今の声は・・・?)
超時が首をかしげていると、突然奇妙な音と共にレミリアの座っている椅子の後ろの空間が裂け、金髪で紫色のドレスを着た美しい女性がその空間の隙間から現れた。
その女性は先日博麗神社でレミリアの前に現れた「紫」と呼ばれる女性であった。彼女が床に降り立つと今まで開いていた後ろの隙間が閉じ、彼女は優雅にお辞儀をして、
「ごきげんよう、二人とも。貴方・・・超時君、だったかしら。貴方とは初対面だったわよね。私は八雲紫、妖怪よ。」
「は、はぁ・・・。」
超時が紫の摩訶不思議な登場と自己紹介に戸惑っているとレミリアが腕を組みつつあきれた声で言う。
「何の断りもなしに他人の館の、特に主の部屋に入ってくるのは感心しないわよ紫。あの魔法使いよりもたちが悪いんじゃないかしら。」
そう皮肉をレミリアが言うと紫は余裕の笑みを浮かべ
「あら、今に始まった事ではないじゃない。・・・・・それより、超時君の体のことなんだけれど。」
紫はそう言ってレミリアの隣の椅子に腰掛け、上品な扇を取り出しつつ話し始めた。
「結論から言うけれど、貴方の身体本体は無事よ。あの事故の後、近くで見ていた人がすぐに救急車を呼んでくれたおかげで、今は病院で【意識不明の重体】として扱われているわ。」
「本当ですか!?・・・無事でよかった・・・あぁ、しかしどうして八雲さんは」
「紫、でいいわ。」
「あ、はい。その、紫さんはどうして僕の身体が無事だって分かるのですか?」
そう超時が尋ねると紫はクスリと笑みを浮かべ
「バカね、私には何でもお見通しなのよ。実を言うと、貴方が事故にあってこの幻想郷に飛ばされてからの貴方の行動をこっそり観察させてもらったの。環境適応力が高くて驚いたわ。常人なら普通はヒステリックになったり、そのままパニックに陥ったりすると思うのだけれど、貴方は随分と落ち着いているのね。」
「いえ、この世界に飛ばされたときはこれからどうなるんだろうと不安で一杯だったのですが、お嬢様のおかげでなんとか落ち着きました。もし、あのときお嬢様以外のところへ飛ばされていたら・・・考えたくも無いですね。それに、僕自身も以前に体質の所為か分かりませんが、色々な場所や空間の裂け目?みたいな所に飛ばされた経験があるのでその点では大丈夫でした。・・・流石にこの幻想郷のように具体的なところは初めてですけどね。必ず、元の世界に帰れるように頑張りたいと思っています。」
そう超時が胸を張りながら決意を露にして言うと、レミリアは何故か表情を曇らせた。
嬉しいような、寂しいような、複雑な顔をしたが超時はそれに気付く事ができなかった。
紫はそんなレミリアと超時を見て微笑むと、立ち上がって
「まぁ、貴方自身が元気そうで安心したわ。レミリア、いい執事を持ったわね。超時君、貴方もあまりレミリアや館の他の人たちに迷惑をかけるような真似はしては駄目よ。今日はこれで帰るわ・・・あぁ、今度はちゃんと帰るから安心して頂戴。それじゃぁ、二人ともごきげんよう。」
紫はまるで母親のように諭すと再び隙間空間が現れ、その中へ体を埋めていった。
「・・・。」
「了解です。ありがとうございました。」
紫がいなくなるとレミリアが溜息をつきつつ、
「はぁ・・・アレがいるとどうも調子が狂うわ。・・・でも、紫の言っていたことは事実よ。貴方の身体の安否も確認できたし、貴方はもう少しゆっくりと 落ち着いてやりなさい。あぁ、もうこれは下げていいわよ。ご馳走様。」
「分かりました、片付けますね。」
レミリアがテーブルに置かれたテーブルに目を落として言うと、超時は言われた通りにそれらを片付けレミリアの部屋を出て行こうとレミリアに背を向けたとき、
「あ、そうだ、言い忘れていた事があったわ。超時、待ちなさい。」
「・・・?どうしたんですか?」
超時が立ち止まってレミリアのほうを振り向くと、レミリアは言い難そうに、
「その、貴方は少し焦りすぎている気がするわ。主の命令よ、貴方に三日間の休暇を与えるわ。その三日間は紅魔館の仕事に従事しなさい。いくら半吸血鬼になったとはいえ、半分は人間なのだから、あの魔法の森に入ったこともあるし当然のことだと私は思うわ。」
「は、はぁ・・・お嬢様が仰るのなら間違いは無いですものね。了解です、お嬢様の言う通りに紅魔館の仕事に専念することにします。」
「え、えぇ。・・・随分と潔くなったわね。何というか、前向きになったわ。」
レミリアが感心して言うと、超時は、
「そう、ですか?以前、お嬢様が湖で仰られたことを実践しているだけなんですけども・・・。」
「あぁ・・・まぁそれでもいいわ。とにかく、無理はしないで頂戴・・・これでも心配をしているのよ?」
「ありがとうございます。」
超時が微笑んで受け答えをすると、レミリアは顔を紅くして、
「わ、わかったのなら早く行きなさい。私はこれでもう寝るから、咲夜にもし会ったらそう伝えておいてくれるかしら?」
「了解です。お休みなさい、お嬢様。」
超時は向きを変え、レミリアの部屋を出て行った。一人部屋に残ったレミリアは椅子から立ち上がり、夜空に浮かぶ紅い月を窓から見上げつつ、
(まったく・・・超時といい紫といい、最近は調子が狂ってばっかだわ・・・。)
そう思って溜息をついた。しかし、彼女の目にはどこか嬉しそうな表情さえ見えた。
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レミリアの部屋を出て厨房へ向かう途中、超時はワゴンを押しながら、
(なんだかんだ言っても、お嬢様は僕の事を気にかけてくれているんだな・・・。でも、どうしてそこまでして僕のことを・・・?)
そんな疑問を抱きながら超時は食器を乗せたワゴンを押して厨房へと向かっていった。