超時がレミリアの命令通りに紅魔館の最上階へ続く階段を登ると、そこにはすでにレミリアと、パチュリーが彼を待っていた。
二人は彼に気づくとレミリアがまず口を開いた。

「随分と遅かったじゃない。主人を待たせるのは執事として感心しないわ。・・・まぁまだ最初だからしょうがないとしても善処しなさい。」

「申し訳ありません、美鈴さんとの花畑の仕事を手伝っていたもので・・・。」

「それは咲夜から聞いたわ。でも、それだけじゃまだまだよ。貴方の仕事はまだたくさんあるんだから。身体もまだまだ動くはず、この前も言ったとおり半吸血鬼は回復速度と身体能力を飛躍的に向上させるわ。中国との仕事の中でそれが解ったんじゃないかしら。」

「確かに、自分でも結構な重労働だったと思うんですが、あまり疲れてはいません。・・・それで、お嬢様が僕を読んだ理由は・・・?」

「あぁ、そうそう。パチェ?」

そう言うとレミリアはパチュリーの方を向くとパチュリーは、

「とりあえず、貴方には元の世界に帰る前にこれからのことを考慮して空を飛べるようになる薬を飲んでもらうわ。」

「そんなことできるんですか?」

「私にとって造作も無いことよ。あの後私個人でさらにあの魔法薬の研究をしていたのだけど、どうやらあの材料はこの幻想郷全土を渡っていかないと手に入れられないみたいなの。だから、材料を効率的に集めるには歩きより空を飛んだほうが早いってわけ。それと同時に・・・これを渡しておくわ。」

そういうと彼女は超時に大きめの羊皮紙を手渡した。
そこにはなにやら地図のような絵と、メモが記されていた。

「これは・・・?」

超時は不思議に思いパチュリーに問いかけた。

「それは幻想郷のおおまかな地図よ。この前渡したあの羊皮紙と照らし合わせて材料のある場所のこともメモしておいたから、これを参考に集めると良いわ。」

「あ、ありがとうございます!・・・でも、どうやってこの地図を・・・?」

「こぁの案で、幻想郷関連の本を探してもらったら丁度いい本があったからそれを参考にしただけよ。少し曖昧なところもあるから目安として扱ってくれると嬉しいわ。」

「充分助かります。大事に使わせていただきます。」

超時はパチュリーにお礼を言うとレミリアが、

「・・・で、パチェに空を飛べるようにしてもらったらまた私のところへ来なさい。今夜はいい月夜だから外出したいの。博麗神社にお茶をたかりに行くわよ。」

そう言うとレミリアは自分の部屋へ入っていった。

「博麗神社・・・。」

そう超時は呟くと早速地図でその場所を確認してみた。

それは地図の一番右側、つまり東側に位置しており、そこにはメモで「巫女の涙」と書かれている。

「確かに、神社には巫女さんはいますけどここの巫女さんの確証はあるのでしょうか?」

そうパチュリーに問いかけると、彼女は、

「幻想郷で神社といえば真っ先に思い浮かべるところがそこよ。咲夜から聞いたのだけど、最近じゃ紅魔館の裏にある妖怪の山にも神社ができたって聞いたけど・・・こっちのほうが認知度は高いわ。もっとも、参拝客はさっぱりのようだけど。」

「そうなんですか・・・。」

「まぁ、でもレミィのようにしばしばお茶をたかりに行く子もいるわけだし、寂れてはいないはずよ。・・・さて、それじゃあ図書館まで着いてきて。魔法薬とその説明を色々としたいから。」

「分かりました。」

そう言うと二人は図書館へ場所を移動し、超時はそこで数十分の説明と空を飛ぶ練習をするのであった。

 夜もすっかり更けて、綺麗な月が煌々と輝いている月夜に超時は自室で新しい執事服に着替え再びレミリアの部屋の前にいた。

(それにしてもあの薬、すごい味だったなぁ・・・まだ舌の感覚が麻痺してるよ・・。でもあれで空を飛べるようになれるなんて、パチュリー様の作る魔法薬ってすごいなぁ。)

そんなことを思いつつ待つこと数分、カチャリとドアの開く音がしてレミリアが姿を現した。

薄桃色の動きやすそうなドレス、それと同じ色のナイトキャップといったいつもの服装で彼女は超時を見ると微笑し、

「ふふ、ちゃんと約束は守れたようね。どう?飛べるようになった感覚は。」

「はい、まだ少し変な感じはありますが、大したことはありません。」

「パチェの作る薬は竹林の・・・確か永遠亭だったかしら、そこにいる医者と同等の技術は持っているはずよ。効いて当然だわ。」

そう言うと彼女は階段を下りていき、超時もそれに続く。

エントランスには玉葱がたくさん入った大きなバスケットを持った咲夜が二人を待っていた。

レミリアは彼女に問いかける。

「咲夜、そのバスケットに入っている大量の玉葱は一体なんのつもり?」

「パチュリー様の案で神社の巫女の涙を得るために、厨房から少し持ってきました。」

(玉葱で涙って、そんな方法でいいのかな・・・)

苦笑しながらもそのやり取りを見ていた超時に咲夜は小瓶を渡した。

「その瓶に涙を入れてパチュリー様に届けて下さい。」

超時は頷くとそれをポケットに閉まった。

「それじゃ、そろそろ行きましょうか。」

レミリアがそう言って紅魔館の扉を開け、三人は博麗神社へ向かう。



少年移動中・・・




「ここが博麗神社ですか・・・随分と和の造りですね。」

神社についてまず口を開いたのは超時だった。

月明かりでもはっきりとした朱色の鳥居の向こうに大きな賽銭箱がある厳かな感じの神社があり、更にその奥には木造の家屋が見え、そこからは明かりが漏れている。

「そりゃ、神社ですもの。当然じゃない。」

レミリアはそう言って神社の鳥居の下に降り、そこから奥の家屋まで歩いていった。

咲夜と超時も着いていくと、その家屋の縁側に赤と白の腋が露出している衣装に身を包んだ女の子がお茶を飲みながら夜空に浮かぶ月を眺めて座っていた。

その少女はレミリア一行に気づくと、今まで手にしていた湯呑みを置いて立ち上がり、

「あんたたちから来るなんて一体どういう風の吹き回し?また何か企んでるんじゃないでしょうね。」

そう言われるとレミリアはニヤリと笑みを浮かべて、

「あら、霊夢。久しぶりの対面だってのにその態度は何?ここは普通私との再開を祝うべきよ。」

「あの事件を起こしといてよく言うわ。・・・で、今日は何の用なの?あんたが妖怪退治の以来をするわけないし、それにあんたの後ろにいるその人間は何なのさ。」

「この子は私の新しい執事・・・まぁ見習いだけど、東雲超時という者よ。今日は月が綺麗だったから貴方のところへこの子の紹介とお使いも兼ねてお茶をたかりに来た。ただそれだけの理由よ。」

「お使いって、一体何のことかしら?・・・これは少し訳がありそうね、ちょっと待ってなさい。」

そういうと霊夢と呼ばれた少女は家の奥へ入っていた。レミリアたちは縁側に座って月を眺めつつ彼女を待っていると、お茶菓子とお茶の道具を持って彼女が戻ってきた。

手際よく準備をして彼女はお茶を各々に手渡しながら超時に話しかける。

「とりあえず、自己紹介をしとくわね。わたしはこの幻想郷を管理する博麗神社の巫女の博麗霊夢よ。この幻想郷のことはレミリア達から聞いてると思うから略すけど、一体あんたはどこから来たのよ。外の人間でもここに来るときにあんな大きい結界の揺らぎが生じるなんて滅多にない事なんだけど・・・」

「あぁ、それは・・・・・」

超時はそう言って今までの事を掻い摘んで彼女に説明した。



少年説明中...



「なるほどね。・・・つまりあんたは外の世界よりももっと遠い世界からやってきて、レミリアのところで見習い執事としてお世話になっている、と。」

霊夢が感慨深そうに言うと超時はそれに頷く。

「まぁ、確かにあんたの証言であんたがここに来た時とここの結界の大きな揺らぎが生じたのがほぼ重なるとなると・・・・・その話はどうやら本当のようね。」

彼女は一息つくとお茶を一口飲んで更に続ける。

「・・・で、今日ここにお茶をたかりに来るって面目であんたは元の世界に戻るための魔法薬をパチュリーに作ってもらって、それの材料にわたしの、巫女の涙が必要って訳ね・・・・・。レミリアの言っていたお使いの意味がようやく分かったわ。」

「それじゃあ・・・!」

ポケットの中にある小瓶に指先で触れつつ超時が言いかけたとき、それを霊夢が遮る。

「ただし、条件があるわ。」

にやりと不適に笑う彼女に超時は恐るおそる尋ねる。

「その条件とは・・・?」

「そうね・・・数日置きに神社に来てわたしの手伝いとお賽銭を奉納しなさい。これが飲めないんじゃ私の涙はやらないわ!」

女王のごとく高笑いをしている霊夢を見て咲夜はぼそりと超時に囁く、

「彼女の悪い癖です。彼女は金の亡者なんですよ。お賽銭の奉納が少なすぎるからこうやって何が何でもお賽銭・・・というのも名ばかりですが、それを得るために色々な手を使って客からお金を巻き上げてくるんです。」

「そうなんですか・・・。お金の事になると人が変わったようになりますね・・・でも、僕はお金なんて持ってないし・・・。」

「――――あら?」

二人の話を聞いていたレミリアは涼しい顔で霊夢に、

「お賽銭って神社にあったぼろっちぃ木箱に金貨や銀貨を入れるアレでしょ?それなら私のところから持っていくといいわ。」

そうレミリアが言うと今度は咲夜が超時と霊夢に向かって、

「お屋敷の仕事も数日に一日休日を与えているのでその時にでも行けばいいんじゃないですか?」

そう言ってレミリア、咲夜、超時の三人は霊夢を見ると高笑いをやめ小声で、

「ま、まぁわたしはお賽銭が集まればそれで良いんだけどね・・・。」

それっきり黙ってしまった霊夢をみてレミリアは勝ち誇ったような顔で、

「どうやら決まりのようね・・・・・咲夜?」

「畏まりました。お嬢様。」

そう返事をして咲夜は立ち上がり、玉葱の入ったバスケットと霊夢の手を掴んで

「貴方も一緒に来て手伝って下さい。」

そう超時に言うと奥へ入っていった。

超時も立ち上がり、その後に慌ててついていく。
 
 一人縁側に残されたレミリアは一息ついてお茶をすすると、まるで誰かに話しかけるかのように呟いた。

「いい加減出てきたら?いるのは解っているのよ、紫。」

傍から見れば彼女がただの独り言を言っているようにしか見えないが、彼女がそう言って間もなく、今まで誰も居なかった空間に一線入ったかとおもうとそれが開き、禍々しい模様の中から優雅な雰囲気の綺麗な金髪を持つ美しい女性が白い傘を持って現れた。

その女性は笑みを浮かべ、縁側に腰掛けると、

「久しぶりにここに起きだしてきてみたら、随分と面白そうなことになってるじゃないの。私なら簡単に彼を返せるけれど?」

「その必要は無いわ。」

紫と呼ばれるその女性の提案をレミリアは即答で拒否した。

その反応に一瞬驚いた表情を見せたが何かを察したように笑みを浮かべ、意味深に、

「なるほど、分かったわ。なら私はこの件についてはあまり触れないようにするわ。・・・まぁお遊びも程々にしなさいね。」

そう言って彼女は再びその隙間に体を入れつつ去り際に、

「吸血鬼の初恋、ってとこかしらね。フフ・・・」

「なっ・・・・・!」

それを聞いてレミリアは赤面し彼女に飛び掛ろうとしたが一足遅く、すでに隙間が閉じられた後で、彼女の笑い声が微かに耳に残るだけだった。

「はぁ・・・。」

レミリアは再び縁側に座ると小さく溜息をついて夜空に浮かぶ月を眺めるのであった。

 

レミリアと紫が縁側で話している頃、霊夢家の台所には椅子に縛り付けられた霊夢と、玉葱と包丁を持った咲夜が対峙し、その間にゴーグルを着用した超時がまな板と小瓶を持って準備していた。

咲夜は不敵な笑みを浮かべると、霊夢に向かって、

「さて、準備は宜しいかしら?」

そう問いかけると霊夢は面倒臭そうに、

「あー、はいはい。いつでもどうぞ・・・・!」

彼女が言い終えるや否や超時が霊夢の顔の前に構えていたまな板に玉葱が置かれ、咲夜はものすごい速さで微塵切りにしていった。

瞬く間に一個の玉葱が微塵切りにされると霊夢の目には大粒の涙が浮かんでいた。

超時は彼女の眼に浮かんだ涙を素早く持っていた小瓶で掬うと小瓶に少量の涙が溜まった。

それを見て咲夜は、笑みを浮かべて、

「パチュリー様は確かその瓶一杯に溜めろと仰っていましたわよね。・・・フフフ。」

「ち、ちょっと待ちなさいよ。それって結構な量よ?少しは休まs・・・」

「問答無用ですわ・・・・!」

霊夢の懇願さえ最後まで聞かずに二個目の玉葱を取り出して再び微塵切りを始めた。

(咲夜さんも何か変なスイッチが入っちゃったみたいだなぁ・・・・)


・・・・・・数分後、超時の手にしていた小瓶には霊夢の涙で一杯になり、彼の背後に置いてあった器には玉葱の微塵切りで一杯になっていた。

咲夜は額に浮かぶ汗を拭いつつ、

「これで持って来た玉葱は最後ですわ。」

「ちょ、もう瓶は一杯じゃない!もう切る必要なんてn」

「残された玉葱が可愛そうですわ・・・!」

「あぁああ、目がぁ、沁みる〜・・・・」

こうして持って来た全ての玉葱を微塵切りにした咲夜は包丁を置き、一息ついて超時に向き直り、

「これで、終わりですわね?」

「は、はい・・・・・そうですね。」

超時は面目なさそうに、椅子に縛り付けられて目を真っ赤に腫らしてぐったりとしている霊夢を見ながら言った。

「あ、あんた・・・」

その霊夢がまるで生きた屍のように頭を持ち上げ、真っ赤な目で超時を睨み付ける。

「これだけしてやったんだからそれ相応のお賽銭と仕事を言いつけてやるから覚悟しときなさいよ・・・。」

そう言って再びガクリと力尽きた。

超時はお礼を言いながら彼女を縛り付けていた縄を解き、両手で抱えて居間へ寝かせた。

咲夜はその間台所を片付けて一息ついていると、そこに縁側で待ちくたびれたのかレミリアがトコトコとやってきた。

レミリアは霊夢の顔を見て大いに笑った後、改めて彼女に言った。

「そういえば霊夢、天狗から聞いたんだけれど最近神社の裏に温泉ができたんだってね。咲夜、今日はここで湯浴みをするわ。準備して頂戴。」

「畏まりましたお嬢様。少々お待ちを。」

そう言って咲夜は姿を消した。

「そ、そんな勝手な・・・・。」

霊夢は横になったまま落胆の声をあげると、レミリアが腕を組みつつ彼女を見下ろし、

「別にいいじゃない減るもんじゃないし。・・・あ、そうそう。貴方も勿論入るわよね?」

ニヤリと笑って超時を見つめる。超時は顔を赤くしてしどろもどろに、

「い、いやぼぼ僕は別に・・・おお嬢様たちだけでどうぞゆっくりしてください!」

それを見てレミリアはフフと笑って、

「冗談よ。貴方、そんなんじゃいつか女の子に騙されるわよ?」

「あ、そ、そう、ですよね。はい。」

まだ顔が赤い超時を見てレミリアは優しい笑みを浮かべ、

「ほんと、貴方ってからかいがいがあって面白いわね。」

そんなやり取りをしていると、咲夜が準備を整えて戻って来た。

「準備が整いました。お嬢様。」

「ご苦労様。それじゃあ行きましょうか。貴方は霊夢の様子を見ていて頂戴。」

「分かりました。」

そう言ってレミリアと咲夜は外へ出て行った。

「さて、と。」

超時はレミリアと咲夜を見送った後、霊夢の方を向くと彼女はまだ目は赤く腫れているが、起き上がり座布団を敷き、卓袱台に肘をついて座っていた。

二人の間に嫌な沈黙が流れ始めたとき、超時がそれを破った。

「あの、お茶でも淹れましょうか?」

そう言うと、霊夢は溜息をついて、

「そうね。お願いするわ。」

そう一言言うと、再び黙ってしまった。

てっきり怒声が飛んでくると思っていた超時は拍子抜けつつ、先程霊夢が淹れたようにお茶を淹れて彼女に差し出した。

彼女は無言でそれを受け取り、一口すすると、

「うん、丁度良いわ。」

そう素っ気の無い感想を述べる。

超時はそんな霊夢に申し訳なさそうに話しかける。

「・・・あの、もしかして怒ってます?」

すると彼女は意外そうな顔をして、

「いや・・・別にそうゆう訳じゃないんだけど、少しレミリアの事で考え事をしていただけよ。」

「お嬢様の?」

超時がさらに問いかけると、霊夢は頷きお茶を飲みつつ遠い目をしながら話し出した。

「ちょっと昔の話になるけど、夏の真っ只中にこの幻想郷全体を紅の霧が覆う異変があってね。それの所為で、太陽の光が遮断されちゃって色々と大変だったわー。・・・まぁ結局それは わ・た・し・の・お・か・げ で一件落着したんだけど、その時の首謀者がレミリア・スカーレット。『永遠に紅い幼き月』だったわけよ。あの頃の彼女はなんか冷たいものを感じたんだけど・・・そんな彼女があんたみたいな人間を執事としてまで仕えさせるなんて・・・なんか初めて会ったときと比べて角が取れたというか、柔らかくなったというか・・・とにかく、印象が変わったなぁと思ってね。」

そこまで言って彼女はお茶を飲み一息つく。

「あのお嬢様にそんな過去があったんですか・・・。」

超時はレミリアに会ってから今までの事を思い出す。

初めて会ったとき、半吸血鬼にされたとき、夜に散歩したとき・・・そんな事を考えていると複雑な気持ちになり、表情を曇らせていると霊夢が、

「あぁもう、しけた面すんじゃないわよ、男の子でしょ?あの事件ももう過去の事よ。レミリアの他にも異変を起こして解決されりゃそのままここで普通に暮らしてる輩なんてわんさかいるんだから。」

そう言って残りのお茶を飲み干すと湯呑みを置いて霊夢は立ち上がり、

「さてと、玉葱で泣かされたのと昔の話ししたのでちょっと疲れちゃったわ。・・・そうね、あんたに早速仕事を言いつけてやるわ。わたしはこれからお風呂に入るから、あんたは家の外にある釜に火を入れてお湯を沸かしなさい。道具一式はそこにあるからよろしくー。」

そう言って部屋を出て行った。

超時は言われたとおりに家の外に出て裏のほうに周るとそこには家の中から飛び出た釜と薪があった。

家の中を覗いてみるとそこには木で造られた風呂桶が置かれていた。

超時は中に水が入っているのを確認すると、釜を前にして火を起こし薪をくべて数分、先程覗いた窓からもうもうと湯気が漂い始めた。

それを見計らったかのように霊夢がやってきて、風呂の様子を見ると、

「そろそろ良さそうね・・・あんた、覗いたらどうなるか分かってるわよね?」

そう言って中から衣擦れの音がして彼女が湯加減を見ながら風呂桶につかる音がした。

超時は釜の火の様子を見ながら返事をする。

その後彼は霊夢の指示に従って火を調節しつつ、ふと疑問に思った事を投げかけた。

「・・・そういえば、先程お嬢様が言っていた温泉には霊夢さんは行かないんですか?疲れを取るにはそっちの方が効能的に良い気がするんですけど・・・。」

その問いかけに今まで鼻歌交じりでくつろいでいた霊夢が答える。

「うん?・・・まぁそりゃ疲れを取るには温泉の方がいいけどさ、わたしにとってこっちの方がなんか落ち着くのよね〜。あの温泉ができたのもつい最近だし、いずれあそこにもお賽銭箱を置いて・・・フフフ、大儲けよ。」

(お賽銭の趣旨が違ってる気がするけど・・・)

超時は中で霊夢がニヤニヤしているのを想像し苦笑いを浮かべながら、

「愛着・・・って奴ですか。」

「ま、そんなところかしらね〜。あ、もっと熱くして。」

「わかりました。」

超時は薪をくべながらふと夜空を見上げた。

やわらかい光を放つ綺麗な月はいつの間にか西の空へ傾いていた。

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