C 与えられた場所
レミリアと超時の二人は紅魔館から少し離れたところにある紅魔館の門まで来ていた。
その門は赤い鉄格子の大きな門で、その門から左右に赤レンガの壁が弧を描き紅魔館を囲むように続いている。
そのレンガの壁の一角に小さめの木の扉があり、門の内と外の両側に洋風のランプが点いていて辺りをぼんやりと照らしている。
ふと超時は門の外側にチャイナ服に身を包んだ長身の女性が一人で立っているのに気がついた。
彼女も二人に気づくと門越しに、
「あっれー?お嬢様じゃないですか!どうしたんです?こんな時間に、こんなところに来られるなんて。」
そう明るい口調で問いかけると、レミリアは、
「えぇ、ちょっとね。久しぶりの心地いい月夜だったから、外へ散歩をしたくなったの。・・・それに、貴方に紹介したい子もいるし。」
「あ、隣にいる人間ですね?」
そう言うと彼女は超時の方を向いた。
超時は慌てて自己紹介とここで働くことになったことを伝えた。
すると彼女は腕をその豊満な胸の前で組み、興味深そうに
「へーぇ、今日からここで働くんですかー。私は主に屋外の仕事が主なものですから中の仕事はよくわからないですけど、頑張ってくださいね?・・・あ、申し遅れました、私『紅 美鈴』と言います。主にここの門の門番と、花畑の手入れを担当しています。よろしくお願いしますね?あ、『紅 美鈴』ですからね?ほ・ん・め・い・り・ん!断じて中国とか何かの調味料の名前じゃないですからねっ?」
そう強く言うとレミリアが驚いた様子で、
「あら、貴方中国じゃなかったのね?いつも咲夜がそう言っていたから私てっきり。」
「いやいやいや、お嬢様ひどいですぅ〜・・・って咲夜さんも酷い!私の名前はほんめいりんですって何度言わせればいいんですかぁ〜。」
方をおとす中ご、美鈴に対して超時は慰めるように、
「ま、まぁまぁそう気を落とさずに・・・その、美鈴さん。」
「うぅ、ありがとうございます〜・・・。・・・それにしても、珍しいですね。貴方のような人間の、しかも男の人がこの紅魔館で働くなんて。」
「あぁ、それは・・・。」
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(少年説明中...)
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「な、なるほど。そんなことがあったのですか・・・。それはとんだ災難でしたね・・・まぁでも、私にできることがあったら力になりますから、何でも言ってくださいね?」
「あら、それなら・・・。」
レミリアが不意に口を開いた。
「花畑の整備もそうだけど、しっかりと門番の仕事も全うしてもらいたいものね。居眠りや、どこかの船頭みたくサボらないことを期待するわ。」
そう皮肉をたっぷり含んで言うと、美鈴は目を泳がせいかにも焦っている様子で、
「や、やだなぁーお嬢様ぁ。わわ私が居眠りなんかするわけ無いじゃないですかぁ〜。」
(図星だ・・・。)
「ととととりあえず私は仕事を続けたいと思います!お二人とも、お気をつけて!」
そういうと彼女はくるりと向きを変えた。レミリアはくすりと笑うと、
「ふふ、さぁ戻るわよ。」
そう言いながら方向転換をして紅魔館の方へ歩き出した。
超時もその後についていく。
・・・・・やがて二人は紅魔館のエントランスに戻ってきた。するとレミリアが
「次は地下の奥へ行くわ。・・・といっても奥に続く入り口までだけど。貴方にはあまり関係の無いところだけれど、うっかり迷い込んでしまって何かあったら事だものね。一応忠告を兼ねた案内をしておくわ。」
「は、はぁ・・・。」
(地下には絶対近寄るなってことだよな・・・。)
超時はそんなことを思いつつ、彼女の後ろを歩いていった。
二人は階段を降り、じめじめとした地下の廊下を歩いていくと超時の目の前に大きな鉄の扉が現れた。
その扉には幾つもの南京錠が掛けられており、まるで何人もこの奥へ立ち入ることを拒むかのよう重く、堅く閉ざされていた。
超時がごくりと唾を飲み込み、その扉を見つめているとレミリアが、
「これが地下室へ続く扉よ。普段からそのたくさんの南京錠と、目には見えないけれどパチェの魔法で閉ざしてあるの。いくら身体が頑丈になったとはいえ、中に入ったら流石に死ぬわねきっと。」
「そ、そんなに危険なところなんですか・・・?」
「えぇ、それはもう。だから貴方は命が惜しかったらここにはもう近づかないことね。解ったかしら?」
「りょ、了解しました・・・。」
「ふふ、よろしい。・・・さて、次が最後の場所よ。ついてらっしゃい。」
そう言うと彼女は階段を上がっていった。
超時は階段に足を掛けつつ振り返り、その扉を見て、
(触らぬ扉にたたりなしってところかな・・・。何か、すごく危ない感じがする・・・)
そんなことを思っていると上からレミリアの急かす声が聞こえたのでそそくさとその場を後にした。
その後二人は階段を上に二、三度上がっていくと、咲夜とは違うメイドと数回出会い、超時はその都度自己紹介をすることになった。
レミリアが言うには彼女達はみな妖精らしい。
彼は咲夜も同じ事を言っていたことを思い出しつつ、彼女達に自分と同じ刻印がされているのをちらりと見て、
(僕もあの人たちみたいに働けるのかなぁ・・・)
と不安に駆られているとそれを察したのかレミリアが微笑み、
「貴方は貴方らしく働けばいいわ。ここには咲夜もいるし、仕事の大半は教えてくれる筈よ。」
そう言って彼女は階段を登っていった。
それに超時がついていくと、そこは最上階と思われる場所に出た。
レミリアはそこのとあるドアの前で立ち止まり、超時の方に振り返ると、
「ここが私の部屋。そしてここの二つ隣にあるのが 貴方の部屋 よ。」
レミリアの指差す向こうには黒いシックな作りのドアがあった。
「あぁ、あそこが・・・・・・って、えぇ?」
少し間を置いて超時が驚いた声をあげると、レミリアはきょとんとして、
「何を驚く必要があるの?この紅魔館は咲夜のおかげでいくらでも部屋が作れるようになっているから、従者にも部屋を与えているの。与えられた部屋は各自で管理するのは当然のことだけど、それは当たり前のことよね。」
「も、勿論です。ありがとうございます。」
「あら、お礼なんていらないわ。私のほうこそ、貴方と散歩ができて楽しかったわ、ありがとう。明日から忙しくなるだろうけど、頑張りなさい。」
そう言うと彼女は小さく欠伸をして自分の部屋に入っていった。
一人残された超時はレミリアが指差した部屋の前に歩いていき、
(この部屋だったっけ・・・?もう誰かが着替えているとこには入りたくないけど・・・。)
そう思いつつ一息おいてドアノブを握り、ゆっくり手前に引いて開けた。
一方、超時と別れたレミリアは自分の部屋のドアに背を当て、彼が遠ざかっていく音を聴きながら何やら考え事をしていた。
(東雲超時、か・・・・・ふふ、面白くなりそうだわ。)
彼女はニヤリと笑い、小さな窓に映る大きな紅い月を見上げた。
ところ変わって超時は、先程レミリアが言っていた部屋の中にいた。
その中は普通に人が暮らせるような空間で、ふと目に入ったクローゼットをまず開けてみるとそこにはいかにも執事が着るような黒い服が数着あった。そこについている鏡で自分の姿を改めて見てジム帰りでジャージのままであることを思い出し、
(僕、結構浮いていたんだな・・・)
と一人赤面しつつ、そそくさと着替え始めた。
クローゼットの中にある引き出しを開けるとそこには寝間着のようなものが入っており、それに着替えた。
着替えの途中、ポケットからパチュリーから貰った羊皮紙を取り出し、着替えを終えて改めてその部屋の中を見渡してみる。
大き目のベッド、クローゼット、部屋の雰囲気にあった机とテーブル、それにここには女性が多いためか化粧台といったものが置かれている。
超時は持っていた羊皮紙をそこに置くと、この部屋の中にもう一つドアがあるのに気がついた。
彼はそのドアを開けると目に飛び込んできたのは、人間一人は裕に入れる大きなバスタブがあった。
どうやらそこは水周りの場所らしい。
隣にWCと書かれたドアもあり、超時は驚いた様子で、
(部屋の間隔を考えるとここは普通入らないはずなのに・・・・・これがお嬢様の言っていた咲夜さんの能力って事なのかな・・・ここの人たちは何かしら能力を持っているのか・・・。お嬢様が初めに言っていた「時空を跳ぶ程度の能力」がそうなのかな・・・ちょっと格好いいな。)
一人で苦笑いをしてその部屋から出た。
そのままベッドに倒れこみ、深く息をついて天井を見上げる。
ふかふかで寝心地の良いベッドだった。
(何か、この短い間にたくさんのことがあって疲れたなぁ・・・。明日からどうなるんだろ・・・)
そう思いながら彼は眠りに落ちた・・・・・・・・・・・。