幕間〜各地の様子@〜
《妖怪の山》
「文ー?入るわよー。」
そう言ってはたては中にいる文の返事を待たずに彼女の仕事部屋の中に入る。
「あややっ!?ち、ちょっと待ってくださいっ。」
文は慌てて机上を片付けようとするが、間に合わずはたてに書きかけの記事を目撃されてしまった。
「あ、あんたまさかまたみんなに内緒でスクープ記事を書いているの?」
はたては呆れたように言うと文は口を尖らせ、
「他人の部屋に入るときは初めにノックするのが常識だと思うのですが・・・。」
「日頃非常識な奴に常識を問われてもまったく説得力がないんだけど・・・。」
「あや?私がいつ非常識な行動をとったと?」
「常日頃から盗撮まがいな写真を撮ってるじゃない。・・・その記事もそうゆう類なんじゃないの?」
「む。失礼な。私が撮影するのは全て健全かつ正当なものばかりですよ。
誰かさんのように念写に頼って記事を書いているよりかはよっぽどマシだと思いますがね。」
文が皮肉を込めて言うとはたてはため息交じりに問いかける。
「・・・んで、今回の記事はどんな内容なのよ。」
それを聞いて文は得意げな顔をして、
「ふっふ〜ん♪それは読んでみてのお楽しみです。・・・しいて言えば今回は紅魔館がネタですね。」
「へぇ・・・。おおかたあの観光目的で祭りに来ていた執事のことかしらねぇ?」
「おぉ、さすがはたてです。あの地霊殿の主のことではないですが、私の考えていることは全部貴女にお見通しのようですね。」
文が(おそらく芝居だろうが)頬を赤らめて恥ずかしそうに言うとはたては顔を真っ赤にして取り乱す。
「なっ、なん・・・!?ふ、ふん、あんたの考えていることなんて誰だって解るわよ。」
文はただただはたての取り乱す様をニヤつきながら見ているのであった。
《紅魔館》
超時が永遠亭のバイトに出かけて数日・・・
ドゴォオオンッ!!
突然の衝撃に紅魔館全体が震動した。
「っ!?今のは一体?」
紅魔館のメイド長、十六夜咲夜は突然の爆発のような衝撃に驚きの声をあげる。
窓の外を見ると紅魔館の一階ロビーの方からモクモクと煙が出ているのが確認できた。
(まさか・・・爆発?あそこには火の気なんて無かったはずだけど・・・。)
そう疑問に思うも急いでロビーへ向かう。
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「これは一体・・・?」
咲夜がロビーに到着して目撃したものは、粉々に粉砕された紅魔館の扉周辺に倒れている妖精メイド達であった。
そしてその中央に立っていたのは・・・
「・・・・・霊夢?」
博麗神社の巫女、博麗霊夢が幣を片手に立っていた。
「これは貴方の仕業かしら?事と次第によっては少し制裁を下さないといけないわね。」
「あんた、超時とレミリアと一緒にウチにおしかけて約束したわよね。超時が数日置きに雑用しに来るって。」
「そう言えばそんな約束もしてたわね。」
霊夢の声は怒りで震えていた。そんな霊夢に対し咲夜冷静に受け答えをする。
「前回人間の里であんたと会った時もそうだったけど、ここの住人はみんな時間に疎いのかしら。んで、超時はどこ?」
「せっかく足を運んでもらったところ悪いんだけど、超時は今この紅魔館にはいないの。」
「いないですって?あいつはここで働いているんじゃなかったの?」
「とにかく、いないものはいないのよ。
・・・そんな事より、たったそれだけのことで館の扉を破壊したとなれば覚悟はできているんでしょうね?
魔理沙に続いて貴方までこの館を破壊されたとなれば・・・お嬢様からどんなお仕置きが待っているか・・・!」
不意に取り出したナイフを霊夢に続けざまに投げつけた。
それを霊夢はある時はひらりとかわし、またある時は幣ではじいてナイフを防ぐ。
「そんなの私の知ったこっちゃないわ。そもそも部下の監督もできないでメイド長ってよく名乗れたものね。」
「ついでにその減らず口も直しておきましょうか。」
「メイドはメイドらしく黙っておつかいにでも行ったら?」
両者がにらみ合って対峙し、お互いに牽制しているとふと上から凛とした声が聞こえた。
「誰かと思えば霊夢じゃない。魔理沙ほどではないけれどこれはまた随分と派手な登場ね。」
「お嬢様っ!?もうお体は大丈夫なのですか?」
階段を優雅に降りてきたレミリアに対し咲夜は問いかける。
「超時とフランが持ってきてくれた薬のおかげでだいぶ楽になったわ。吸血鬼の回復力を甘く見ないでちょうだい。」
「へぇ。あんたも病気になったりするのね。・・・で、それと超時がここにいないことと何か関係があるのかしら?」
霊夢がレミリアに問いかけると、レミリアが答える。
「そうね。ここで説明するのもアレだし、奥で紅茶でも飲みながら説明しましょうか。
・・・咲夜、ここの片づけはパチェと妖精メイドに任せてお茶の準備をお願い。」
そうレミリアに言われた咲夜は一瞬迷いの表情を見せたがすぐにいつものクールな印象に戻り、淡々と返事をする。
「かしこまりました。」
《守矢神社》
「神奈子様ー。お水を持ってきましたよー。」
そう言って守矢神社の巫女であり、現人神でもある東風谷早苗はゆっくりと襖を開けた。
早苗が部屋の中に入るとそこにはぐったりとした神、八坂神奈子が机に突っ伏していた。
「おぉ・・・・・すまない・・・。」
神奈子は弱々しい声でそう言ってゆっくりと顔をあげ、コップに入った水を受け取る。
みればその表情にいつもの覇気がなく、顔色も悪い。
「まったく、あれくらいのお酒で潰れて二日酔いだなんて、神奈子はまだまだだなぁ。」
呑気な声をだして早苗の後ろからもう一人の神、洩矢諏訪子が現れる。
「いや・・・私も常人よりかは酒に強いと思っていたのだが・・・隙間妖怪が最後にくれたアレは相当こたえた・・・。」
「あぁー、スピリタスのことか〜。紫は外の世界から持ってきたって言ってたけど、ボクはそれなりに愉しめたよ?
紫自身もがぶ飲みしてたし・・・。」
「それはお前たちの臓器が化け物じみているからだろうが・・・うぅ、頭痛い・・・・・。」
「神奈子様、あまり無理なさらないでください。」
「あぁ・・・早苗、迷惑をかける・・・今日は一日休むことにするとしよう・・・。」
そう言って水を飲み干し、ゆっくりと立ち上がり、よたよたと自室へ戻っていった。
「まったく、神様が二日酔いだなんてボクが生まれてから神奈子が初めてだよ。神奈子もまだまだ若いなぁ。」
「でも、その神奈子様に負けたのは・・・。」
「う。そ、それを言われると・・・あ、あれはちょっと油断していただけで・・・ん?早苗、どしたの?」
諏訪子が弁明していると早苗が不意にぼーっとしていたので不思議に思い問いかける。
「あ…いえ、ちょっと紅魔館のあの方をふと思い出しまして・・・。」
「あぁ、祭りのときに来た超時のこと?いきなり早苗が押し倒したときはほんとびっくりしたよ。」
「あ、あれは不可抗力で・・・!」
「あはは、さっきのお返しだよ。・・・そうだねぇ、超時が帰ってすぐに大雨が降ってきたからねぇ。
祭りもお開きになっちゃったし、風邪とかひいてなきゃいいけど。」
「心配です・・・。」
「まぁでも、あそこにいる限り大丈夫でしょ。そんなに心配することないって。
あんだけ元の世界に帰るため努力しているんだもん。」
暗い顔をして超時の身を案じていた早苗だったが、
「そう・・・ですよね。元の世界に帰れるといいですね。あ、私お茶淹れてきます。」
そう言って踏ん切りがついたのか早苗はお茶を淹れに部屋を出て行った。
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