C もしも紅魔館の執事が永遠亭のバイトをしたら
輝夜、超時の二人がゲームをやめるころには夜が明け、外がうっすらと明るくなり始めていた。
「ふぁ〜・・・そろそろ眠ろうかしらね。貴方本当に眠らなくてもいいの?」
「はい。少し仮眠をとれば疲れが取れるので。」
「吸血鬼の血って意外と便利なのねぇ。今度分けてもらおうかしら?」
「そんなにいいものでもないですよ?半吸血鬼になった当初は周りの環境に敏感になりすぎてひどく頭痛に悩まされたものです。今ではもう慣れましたけど。」
「そ。・・・・・あぁ、さっきのうどん、とてもおいしかったわ。ついでにその食器を片づけといてくれると嬉しいわ。」
「わかりました。・・・それじゃ、失礼します。」
そう言って超時は空になった食器を抱え輝夜の部屋を出た。
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超時がその食器を洗いに台所まで行くと既にそこにはエプロン姿の鈴仙が朝食の準備をしていた。
「あ、超時さん。おはようございます。早いんですねぇ。向こうでもこのくらいの時間に起きるのですか?」
「え、あ、まぁ・・・はい。」
明るい笑顔で接してくる鈴仙に対し、昨晩の鈴仙の寝姿を目撃してしまった超時は少し赤面しつつ挨拶をかわす。
そんなこととはつゆ知らず、鈴仙は朝食を作りながら超時に言う。
「そうそう、今日は一日私とてゐ、超時さんの三人で人里に行きますから朝食の後診療所の前に来てくださいね。」
「人里に?どうしてまた?」
超時が鈴仙の隣に立ち、食器を洗いつつ問いかける。
「実は師匠に言われたんですが、人里の住人達に薬を届けないといけないし、向こうの商店で売っている薬草を買ってきてほしいとのことです。
つまるところ、人手が足りないんです。・・・・・あれ、その食器は?」
「あぁ、これはさっき輝夜さんのところへ夜食を・・・・・・」
そんなやりとりの中、永遠亭の朝は始まった。
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「んー、それにしてもこの永遠亭・・・どうしてこんな竹林の中にあるんだろう・・・・・?」
(こうしてみると、まるで何かから隠れるようにして建っているみたい・・・考えすぎかなぁ・・・)
朝食を終え、出掛ける支度をした超時(勿論執事服)は約束通り診療所の前に立ち、鈴仙とてゐの二人を待っていた。
「その考え、意外とその通りかもしれないよ?」
「わっ!?・・・なんだてゐさんでしたか。いきなり後ろから話しかけないでくださいよ・・・。」
「なんだとはなんだ。あたしはそういう驚く声が好きなのさ。」
「その趣味はあまり感心しませんよ・・・。でも、この永遠亭ってやっぱり・・・」
「ま。追々解るウサ♪」
「追々って・・・」
(ウサって・・・?)
超時がいきなり現れたてゐにうんざりしていると後ろから鈴仙の声が聞こえた。
「超時さーん、てゐー?こっちに来て少し手伝ってもらっていいですかー?」
「だってさ。ささ、向こうに行くウサ。」
「はーい。」
(ウサってもしかして語尾のこと・・・?)
超時とてゐが鈴仙の元へ行くと、振り分け荷物と薬箱を持っていた。
「超時さんはこの振り分け荷物を肩にかけて持って行ってください。てゐはこっちの薬箱をよろしくね。」
「解りました。」
「了解ウサ!」
そう答え、超時とてゐは荷物を持ち三人で人里へと向かった。
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少年執事移動中。。。
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「まずはここですね。」
鈴仙が立ち止り、一つの建屋を見上げた。
「ここは・・・寺子屋?」
(ここって確か・・・)
超時が考え込んでいると、鈴仙とてゐはずかずかとその寺子屋に入っていった。
「こんにちはー。」
「ちわー。」
超時が慌てて後に続いて入るとその中は畳が敷き詰められており、長方形の木製の机が数列にわたって並べられ、
子供たちが硯と筆をだして熱心に文字を書いていた。
そしてその並べられた机の先頭に教壇と思われる机が置かれ、そこには一人の女性が立って黒板にチョークでひらがなを書いていた。
(へぇ・・・これが寺子屋かぁ。なんだか僕のいた世界の学習塾みたいだな)
「あら?誰かと思えば薬屋さんじゃないですか。おーい慧音ー。薬屋さんがいらっしゃいましたよー。」
(そうだ思い出した。ここは慧音さんが子供たちに勉強を教えているところか・・・でも、あの人は一体?)
超時が首を傾げていると奥の部屋から超時が香霖堂に行く際に知り合った上白沢慧音が現れた。
「あぁ、君たちか。・・・おや、君は・・・・・紅魔館の執事?どうして君が薬屋と一緒に?・・・まぁとりあえず三人ともあがりたまえ。」
「失礼しまーす。」
「しまーす。」
「えと、失礼します・・・。」
そう言って鈴仙とてゐ、超時の三人はは靴を脱いであがり、慧音が出てきた部屋へ入った。
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「とりあえず、これとこれとこれ、それからこれが頼まれていた傷薬です。」
鈴仙が薬の説明をしてそれを慧音に渡す。
「いつもすまないな。これで子供たちが怪我をしても治療できる。うちの子供たちはやんちゃだからな。」
「そうですか。今後とも八意診療所をごひいきによろしくお願いします。」
「あぁ、そうさせてもらうよ。・・・・・して、東雲と言ったか。紅魔館の執事であるお前がどうして薬屋と一緒にいる?」
「えっと・・・出張バイトサービス、ってところでしょうか?」
超時がそう言って誤魔化すと、慧音はケラケラと笑って、
「はっはっは。嘘はいけないな東雲。これでも私は教師だ。子供のウソなんてすぐにわかる。本当のことを言ってみろ。あの吸血鬼のお仕置きか何かなのか?」
「うぅ・・・わかりました。正直に話しますよ・・・。」
(そういえば慧音さんには僕のことを話していなかったんだっけ。)
超時は観念してこれまでのことを洗いざらい話した。
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少年執事説明中。。。
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「なんと・・・!こないだの時空の歪みの張本人だったとは・・・!いやはや、君にはいつも驚かされてばかりだな。」
超時の話を聞いた慧音は心底驚いた様子で言った。
「それで君の元いた世界に変えるためこの幻想郷を東奔西走しているわけか。」
超時はそれに頷く。
「それであのシャンプーハットを探していたのか?」
「あ、それは違って、あれはただのおつかいですよ。」
「超時さん。慧音さんは幻想郷でも4,5本の指に入る知識人ですから、協力していただいたらどうですか?」
話を聞いていた鈴仙が超時にそう提案する。それを聞いて慧音は頷き、
「あぁ、できる限りのことは協力しよう。霖之助にも話しておこう。奴もまた頭は冴えているからな。力になってくれるだろう。」
「いいんですか?そうして頂けると助かります・・・この世界に慣れたとはいえ、まだまだ行ったことのないところがたくさんあるのですから。」
「行ったことのないところ?と言うことはこの幻想郷の地図か何かを君は持っているのか?」
「一応は。パチュリー様に作っていただきました。今は永遠亭に置いてあるんですけど、それを頼りに魔法薬の材料を集めているんです。」
「あぁ、あの引きこもり魔法使いのことか。奴も頭は回るが如何せんずっと部屋にこもりっぱなしだから情報も古いと思う。どうだろう、この幻想郷の地図を私たちに書かせては貰えないだろうか?」
「・・・・・うーん、でもパチュリー様の地図もあながち間違ってはいないので・・・」
「だったら、その地図とけーねの書く地図を合わせて使えばいいんじゃないか?資料が多いにこしたことはないからね。」
てゐが話に首を突っ込む。超時はそれを断る理由もないので、慧音の提案を受け入れた。
「それで、僕からも一つ質問してもいいですか?」
「なんだ?」
「さきほどここに来たとき向こうの部屋で授業をしていた女の人は一体?」
「あぁ、彼女は・・・」
慧音が説明しようとしたところ、子供たちのいた勉強部屋が騒がしくなり、こちらの扉が開いて超時が疑問に思っていた女性が入ってきた。
女性と言うよりかは少女、と言った方が妥当だろうか。パチュリーにも似た色の髪を肩まで伸ばし、赤っぽい紫色の瞳を持った小柄な少女だった。
ただ、彼女から醸し出される雰囲気はどこか落ち着いており、小柄な体系に似合わない大人っぽさを演出していた。
「慧音、子供たちに宿題を出して帰らせたわ。今日はお疲れ様。」
おしとやかな声で話すその少女に対し慧音は笑顔で、
「あぁ、ありがとう阿求。東雲、彼女は稗田阿求(ひえだのあきゅう)。度々こうして私の授業に特別講師として呼んでいる。」
「阿求さん、ですか。」
「?薬屋に見慣れない顔があったのだけど、貴方は一体誰?慧音の知り合い?」
「あぁ、こないだ霖之助の店に行くときに知り合った。・・・そうだ、東雲。阿求にも手伝わせてもいいか?」
「多いに越したことはありませんけど・・・。」
「??どうゆうことになってるの?」
超時は慧音と同様にこれまでの経緯を話した。
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少年執事説明中。。。
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「へぇ。あの原因は貴方だったのですか。そうゆうことでしたら、もちろん協力させてもらいますよ?」
「そう言っていただけて光栄です。幻想郷は優しい人が多くてうれしいです・・・!」
「超時さん、そろそろ次の方の家へ行かないと・・・。」
鈴仙が申し訳なさそうに言うと慧音が、
「あぁ、今は永遠亭の仕事中だったか。引き留めてしまってすまない。また人里に来た時があればここに顔を出してくれると助かる。お互い近況報告を兼ねて数日置きに会えるだろうか?」
「えぇと、霊夢さんのところにも手伝いにいかないといけないんですが・・・なんとか時間を見つけて、あぁ、お使いのついでにでも寄りたいと思います。」
「そうか、来たときには茶でも出そう。」
「そのときはよろしくお願いします。それではこれで失礼します。あぁあと阿求さんも、ありがとうございます。」
「いえいえ、困ったことがあったらお互い様ですから。」
超時はお辞儀をして慧音と阿求に挨拶をして鈴仙とてゐの後に付いて寺子屋を後にした。
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その後数時間にわたって人里の人間に薬を渡し、商店で薬草を買ったりしているうちにいつの間にか時刻は夕刻に近くなり、日が沈みかけていた。
「さて、今日の仕事はこれで終わり!永遠亭に帰りましょうか。」
数々の家に薬を売って回って軽くなった荷物を抱えて鈴仙が言う。
「この時間だと、そろそろあそこにアレが来ているよ!ねぇねぇ鈴仙。少し寄って行こうよ!」
てゐがなにやら鈴仙に提案すると鈴仙は少し考え込んで、
「う〜ん、そうね今日の仕事はこれだけだし・・・久しぶりに飲み行きましょうか。」
(飲みに行く・・・・・?)
超時は疑問に思いつつ迷いの竹林へ続く帰路へとつくのであった。